アジアの現代文芸の翻訳出版
パキスタン
出版年月日 1991年12月12日
アーナンディー
- 著者
- :グラーム・アッバース 著
- 翻訳者
- :山根聡 編訳
- 総頁数
- :216
表題作「アーナンディー」をはじめとする11編を収録しています。ごく日常的な生活を営んでいる人間を主人公に、人間がもつ本質的な弱さを簡明な文体で淡々と、さりげなく描いています。表題作では、市一番の繁華街にいる娼婦が追放されます。追放された娼婦たちが移り住んだ村落に、やがてまた人々が集まるようになり、店ができ、鉄道が敷かれ、都市となりました。市議会ではまた娼婦の追放が議題となり、同じ愚を繰り返します。その他の収録作「墓標」では、うだつのあがらない事務員が、大理石の板切れを買わされてしまい、今に出世して石に自分の名前を刻み、門の外に掲げようと心に誓うものの、結局は貧しいまま一生の幕を閉じ、大理石は彼の墓標となってしまいます。「アーナンディー(平穏)」はアッバースの代表作の一つとされており、1962年にはチェコスロバキアの外国文学賞を受賞しました。